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なぜ機能が増えるほど、プロダクトは使いにくくなるのか?

2026年08月27日 1 分で読めます 13 ビュー

プロダクトが成長していく中で、機能が追加されていくことは、ほとんど避けられません。ユーザーはより便利な機能を求め、ビジネス側はプロダクトの価値を広げようとし、マーケティングはエンゲージメントの向上を目指し、プロダクトチームは常に新しいアイデアで体験を改善しようとします。

しかし、ここには少し興味深い逆説があります。機能が多ければ多いほど、良いプロダクトになるとは限りません。 機能が適切に整理・優先順位付けされていなければ、新しい機能が増えるたびに、プロダクトは理解しづらく、使いづらくなってしまいます。

例えば、フードデリバリーアプリを想像してみてください。最初は、料理を探して、カートに入れて、支払うだけで十分です。しかし時間が経つにつれて、クーポン、ポイント、会員制度、セットメニュー、おすすめ料理、時間帯限定のキャンペーン、複数の決済方法、スピード配送、事前注文……といった機能が追加されていきます。

これらの機能には、それぞれ存在する理由があります。しかし、それらがすべて同じ画面に表示されると、ユーザーは単に「何を食べたいか?」を考えるだけでは済みません。本来なら非常にシンプルなタスクを完了するまでに、多くの選択肢を処理しなければならなくなります。

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これは、**Hick’s Law(ヒックの法則)**で説明される問題の一つです。Hick(1952)の研究では、選択肢の数が増えるにつれて、反応時間も増加する傾向が示されました。プロダクトデザインでは、この原則をシンプルに言えば、ユーザーが選択しなければならない選択肢が多いほど、意思決定は難しくなると考えることができます。

ただし、問題は「機能が多いこと自体が悪い」ということではありません。銀行システム、企業向けの業務管理ソフトウェア、デザイナー向けのツールなどには、当然ながら多くの機能が必要です。

重要なのは、ユーザーがそれらすべての機能を同時に見て、処理しなければならないのかどうかということです。

ここで重要になるのが、Information Architecture(情報設計)と、体験全体の整理です。プロダクトに何百もの機能があったとしても、ユーザーが現在の目的に合った選択肢だけを提示されるのであれば、使いやすさを維持することができます。

高度な機能や利用頻度の低い機能は、メイン画面にすべて表示するのではなく、より深い階層に配置することもできます。この考え方は、一般的に Progressive Disclosure と呼ばれます。これは、システムが持つすべての機能を一度に見せるのではなく、ユーザーが必要とするタイミングで、必要な情報や操作だけを提供するという考え方です。

もう一つの問題が、**choice overload(選択過多)**です。選択肢が多すぎると、ユーザーは意思決定をしづらくなることがあります。

IyengarとLepper(2000)による有名な研究では、ある条件下において、より少ない選択肢を提示された人のほうが意思決定を行いやすく、自分の選択に対する満足度も高くなることが示されました。

これはデジタルプロダクトでもよく起こります。ある機能が非常に便利だからといって、必ずしもメイン画面に表示する必要があるとは限りません。また、パワーユーザーにとって重要な機能が、新規ユーザーにとって必要とは限りません。

だからこそ、デザイナーが考えるべき問いは、**「プロダクトにはどんな機能が足りないのか?」**だけではありません。

それと同時に、**「ユーザーは今、どの機能を必要としているのか?」**と問いかける必要があります。

私は、これもUI/UXの仕事において特に難しいポイントの一つだと思います。「この機能を追加してください」と依頼されたとき、そのための画面を新しくデザインすることは、実はそれほど難しくありません。

それよりも難しいのは、「そもそも、この機能は本当に必要なのか?」と問い直すことです。

しかし、すべての要望をそのままプロダクトに追加していけば、インターフェースは徐々に複雑になり、ユーザーフローは長くなり、ユーザーが判断しなければならないことも増えていきます。

だからこそ、デザイナーの役割は単に**「追加すること」**ではありません。

優先順位をつけ、グループ化し、隠し、そして時には削除することも、デザイナーに求められる重要な仕事です。

良いプロダクトとは、必ずしも最も多くの機能を持つプロダクトではありません。

ユーザーが本当に必要としているものを、素早く見つけ、実行できるようにするプロダクトです。

時には、良いデザインとは新しいボタンを追加することではありません。

「どのボタンを表示しなくてもいいのか」を判断できることなのです。

 

参考文献

Hick, W. E. (1952). On the rate of gain of information. Quarterly Journal of Experimental Psychology, 4(1), 11–26. https://doi.org/10.1080/17470215208416600

Iyengar, S. S., & Lepper, M. R. (2000). When choice is demotivating: Can one desire too much of a good thing? Journal of Personality and Social Psychology, 79(6), 995–1006. https://doi.org/10.1037/0022-3514.79.6.995

Nielsen, J. (2006, December 3). Progressive disclosure. Nielsen Norman Group. https://www.nngroup.com/articles/progressive-disclosure/

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よくある質問

なぜ機能を追加しすぎるとユーザー体験が損なわれるのですか?
ヒックの法則が示すように、機能が多すぎると選択肢過多となり認知負荷が高まります。画面上に過剰な選択肢が存在すると意思決定が難しくなり、ユーザーが本来の目的を素早く達成する妨げになってしまいます。
UI/UX設計における「段階的開示(Progressive Disclosure)」とは何ですか?
段階的開示とは、ユーザーが必要とする瞬間にのみ必要な情報やアクションを表示する設計手法です。高度な機能や使用頻度の低い機能は階層の奥に配置することで、インターフェースをシンプルに保ち、ユーザーの認知負荷を大幅に軽減します。
デザイナーは新機能の追加要求にどのように対応すべきですか?
求められた機能をそのまま画面に追加するのではなく、それが本当に必要かを評価すべきです。「ユーザーが今何を必要としているか」を問い直し、優先順位をつけてグループ化、非表示、または不要な要素を削除する判断力が求められます。

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