SIer・代理店がAIチャットボットの相談で迷うのは、どこか
SIer・代理店がAIチャットボットの相談を受けたときに迷うのは、多くの場合「作れるかどうか」より「誰が責任を持つか」です。社内の資料をもとにAIが回答するRAG(Retrieval-Augmented Generation、関連する資料の箇所を検索し、それをもとにAIが回答を作る仕組み)は、公開されている部品を組み合わせれば試作まではできます。
難しいのは、その先です。回答の精度を業務で使える水準まで上げること。エンドユーザーのセキュリティ審査に答えること。障害が起きたときに、誰が、どこまで直すのかを決めること。どれも、お客様との契約にそのまま関わります。
そのため、この判断は技術の話というより、事業の形の話になります。自社で作って持つのか、他社の製品を紹介するのか、他社の製品を自社のブランドで提供するのか、の3つです。
自社開発、取次販売、OEMは何が違うのか
自社開発、取次販売、OEMの違いは、エンドユーザーから見える名前と、障害や改良の責任を誰が持つかにあります。

どれが正解ということはありません。同じ会社でも、案件の大きさやお客様の業種によって答えが変わります。
自社開発が向いているのは、どんな場合か
自社開発が向いているのは、AIチャットボットを何年か続けて自社の製品として育てるつもりがあり、その間の投資を続けられる場合です。特定の業界の帳票や用語に合わせた機能で他社と差をつけたいときも、自社で持つ意味があります。
反対に、目の前の1件のために作り始めると、2件目以降でつまずきやすくなります。最初のお客様向けに作った仕組みを別のお客様にも使えるようにするには、データの分け方、権限、更新の手順を作り直すことになるからです。言語モデルの更新への追随や、深夜の障害対応を誰が担うのかも、最初に決めておく必要があります。
取次販売で足りる場合と、足りなくなる場合
取次販売で足りるのは、AIチャットボットを本業の周りのサービスとして紹介し、導入後の運用には深く関わらない場合です。手間が少なく、開発の投資もいりません。
足りなくなるのは、お客様との関係を自社で持ち続けたい場合です。取次では、エンドユーザーの契約先は提供会社になることが多く、更新や追加の相談が自社を通らなくなることがあります。また、競合の代理店も同じ製品を扱えるため、提案の差が価格だけになりがちです。
OEMを選ぶ前に、提供会社に確認したい6つのこと
OEMでは、エンドユーザーから見ると貴社が製品の提供者です。提供会社の弱いところは、そのまま貴社の説明責任になります。契約の前に、次の6点を確認されることをおすすめします。
1. データの保存場所と、学習への利用。 サーバーはどの国にあるか。エンドユーザーのデータをAIモデルの学習に使わないことを、書面で示せるか。
2. 個人データの取扱いの委託関係。 OEMでは、エンドユーザーから貴社へ、貴社から提供会社へと、取扱いの委託がつながります。個人情報保護法は、委託する側に委託先の監督を求めています。提供会社の安全管理措置を、貴社がエンドユーザーに説明できる資料があるかを確かめます。
3. 稼働率の約束(SLA)の範囲と、障害時の連絡経路。 何%を約束しているか。計画停止は含むか。エンドユーザーからの問い合わせを貴社が受けたあと、提供会社へどうつなぐか。
4. ブランドを変えられる範囲。 ロゴ、色、ドメイン、管理画面の表記、通知メールの差出人など。エンドユーザーの目に、提供会社の名前が残る箇所がないか。
5. セキュリティ審査への回答資料。 エンドユーザーのセキュリティチェックシートに、提供会社がどこまで回答してくれるか。
6. 契約が終わったときのデータ。 削除の方法と、削除したことの証明。エクスポートできる形式。
1と5は、SaaS型のAIチャットボットを直接導入する場合と同じ質問です。詳しくは[AIチャットボット導入のセキュリティ審査 承認前に答えておきたい5つの質問にまとめています。OEMで新しく加わるのは、2、3、4の「貴社と提供会社のあいだ」の取り決めです。
ONEBOTのOEMでできること、できないこと
VAONのONEBOTは、企業のお問い合わせ対応に使うSaaS型のAIチャットボットです。PDF、Excel、Word、Webサイトの内容をもとにRAGで回答し、LINEとWebチャットで使えます。ONEBOTのパートナープログラムでは、SIer・代理店様がONEBOTを自社のサービスとして販売し、VAONが構築、運用、監視を担います。すでにOEMで提供いただいているパートナー様もいます。具体的な事例は公開に向けて準備中のため、ご相談の際に、お話しできる範囲でご説明します。
第5章の確認点に対する、ONEBOTの現在の回答は次のとおりです。

一方で、ONEBOTのOEMではお応えできないこともあります。
データを一切インターネットに出せないエンドユーザーには、ONEBOTは向きません。 ONEBOTは回答を作るときに、インターネット経由で外部のAIサービスを使います。社内規程や契約でデータを外に出せない場合、VAONは社内ネットワーク内で動くRAGシステムを、個別の開発案件として構築します。違いは[オンプレミス・閉域網で動くRAGチャットボット 必要になる場面と、引き換えになるもので説明しています。
個人情報保護法への対応は、製品だけでは完結しません。 どのデータを読み込ませるか、誰が閲覧できるか、どれだけの期間残すかは、エンドユーザーと貴社で決めていただく必要があります。
OEMは、どんな手順で始まるか
ONEBOTのOEMは、ご相談から販売開始まで、最短で2週間ほどです。
1. ご相談(オンライン)。 想定しているエンドユーザーの業種、規模、使いたいチャネル(LINE、Webチャット)を伺い、ONEBOTで足りるのか、個別開発が向くのかを判断します。デモ環境で、実際の画面と回答を確かめていただけます。
2. 条件のすり合わせと契約(1週目)。 プラン、仕入れの価格、障害時の役割分担、個人データの取扱いの委託について決めます。
3. ブランド設定と構築(1週目)。 VAONが貴社のブランドでの表示を設定し、環境を構築します。Standardプランで貴社名義のクラウド環境を使う場合は、構築に1週間ほど余分にかかります。
4. 研修と受け入れ確認(2週目)。 貴社の担当の方に操作と運用を覚えていただき、ご一緒に動作を確認します。提案に使う資料もお渡しします。
5. 販売開始。 技術的な質問が多い案件では、VAONのエンジニアがエンドユーザーとの打ち合わせに同席します。エンドユーザーの実際の資料と、業務担当の方に正解を用意していただいた質問50〜100件で回答の正答率を測るPoC(概念実証)から始めると、本契約の判断がしやすくなります。
運用が始まってからは、エンドユーザーへの営業、契約、請求、最初のお問い合わせ対応を貴社が、インフラの構築、運用、監視と、技術的な問題の調査と復旧をVAONが担います。